お正月に飾る鏡餅。
日本には古来より、ご先祖様の霊は田や畑などの自然に神様として宿り、子孫繁栄を見守り自分たちを守ってくれるという考え方があります。
その神様は1年の始まりに年神様となって正月の家々に訪れるとされています。
この年神様が宿るのが、鏡餅です。
日本人は場所や物などありとあらゆるものに神が宿ると考える「八百万の神」の信仰をもっています。
年神様も、家の中の様々な場所に「分霊」されると考えられています。
そのため、鏡餅は一つだけでなく、家の中で年神様をお迎えしたい複数の場所に飾るのが良いとされています。
そのため、すべての部屋に鏡餅を飾ってももちろん良いのです。
しかしこの鏡餅、家の中のどこに飾ってもいいというわけではありません。
玄関に飾る家も多いと思いますが、実は玄関に飾るのはあまりよくないとされているのです。
では、どこに、どんな風に飾ったらよいのか詳しく解説していきます。
鏡餅は玄関に飾ってはいけない理由
鏡餅は、一般的に「家の中で特に大事な場所にお供えすると縁起が良い」と言われています。
家の中で特に大事な場所、というと神棚や床の間があげられます。
玄関は「家の下座にあたる場所」と言われていることから、鏡餅を飾るのには適していないとされているのです。
しかし、現代の家では神棚や床の間がない家庭も多く存在します。
そういった家の場合、玄関に飾っても特に問題はないでしょう。
また、鏡餅を玄関に飾ることをタブーとしている地域もありますので、そういった地域に住んでいるときにはその慣習に従うのが穏やかです。
神棚や床の間がない場合、玄関以外ではリビングやキッチンに飾ります。
ちなみに、同様の理由でトイレや洗面所なども鏡餅を飾るのにはふさわしくないといわれています。
しかし、こういった水回りには「水の神」が宿るとされています。
水は人間の暮らしになくてはならない大切なものであるため、このような水回りに鏡餅を飾ることは間違いではありません。
ただ、衛生的な面からトイレなどに鏡餅を飾ることはためらう人も多いでしょう。
そのような場合は本物のお餅ではなく、
ブラスチックやガラス製の置物、紙でできた鏡餅など、おしゃれにインテリアとして飾り、家内安全や健康を祈願するということでもいいと考えられます。
鏡餅を玄関に飾る場合のポイントは?
先に述べたとおり、家に神棚や床の間がない場合は玄関に鏡餅を飾ることもあります。
玄関とは家の中で唯一土足の場所であり「下座」と呼ばれる場所であることから不浄とされています。
そんな場所に鏡餅を飾る時には、地面に近い場所ではなく、シューズボックスの上などなるべく高い場所に飾ることをお勧めします。
また、玄関の外に門松やしめ縄を飾ることで不浄なものを排除し、その内側は神様を迎えるのにふさわしい清浄なものとされる考え方もあります。
玄関に鏡餅を飾る時は、しめ縄や門松を玄関の外に飾るのもおすすめです。
鏡餅を飾る場所はどこが正しい?
鏡餅を飾るのにふさわしい場所をいくつか紹介します。
<神棚、床の間、仏壇>
鏡餅は家の中で最も大切な場所に飾るのが良いとされています。
家の中で最も大切な場所は、ご先祖様の居場所である神棚や床の間、仏壇です。
この場所は家の主たる場所になるため、鏡餅を飾るのには最も適しています。
<リビング、ダイニング>
神棚や床の間がない家では、家族の集まるリビングやダイニングもおすすめです。
鏡餅は人が生活する場所よりも1段高い場所に飾るとよいとされています。
床の間などはすでに一段高い場所に作られていますが、リビングなどにはそういった場所はありません。
リビングやダイニングの場合は、リビングテーブルやサイドボードの上など、高い位置に飾るようにしましょう。
ただし、いくら高い場所だからと言って、テレビの上など騒がしい場所に飾るのは好ましくありません。
神様の場所としてふさわしい落ち着いた明るい場所に飾りましょう。
<寝室、子ども部屋、仕事部屋>
これらの場所も家の中では大切な場所なので飾るのにふさわしいです。
特に子ども部屋は子供が勉強するのに大切な場所であることから、勉強机の上などに飾る家庭も多くあります。
<キッチン>
火を扱うキッチンは神聖な場所とされ、荒神や竈神と言われる「火の神」が宿ります。
高い場所だからと冷蔵庫の上に飾る場合がありますが、埃がたまりやすかったりするので直接置くのは避け、鏡餅を置く台を使用しましょう。
以上が、鏡餅を飾るのにふさわしい場所です。
ちなみに、鏡餅には大小さまざまな大きさのものがあります。
場所によって鏡餅の大きさを変える必要はあまりありませんが、神棚や床の間など、家の大切な場所に飾る鏡餅は一番大きな鏡餅を飾るのが一般的です。
鏡餅を飾るのに必要な物は?
鏡餅を飾る時に必要なものは以下のものがあります。
<三方(さんぽう)>
鏡餅を乗せる器のことです。
三方は神事によく使われます。
<奉書紙(ほうしょがみ)>
白い和紙のことです。
<四方紅(しほうべに)>
鏡餅を乗せる紅く彩られた和紙のことです。四方に繫栄するようにとの意味が込められています。
<裏白(うらじろ)>
餅の下に敷いてある大型のシダの葉のことです。
後ろ暗いことがない、清廉潔白な心を表すとされています。
また、葉の模様が対になって生えているので、夫婦仲睦まじく、相性の良いことや白髪になるまでの長寿を願います。
<四手(しで)>
紅白でひし形に交互に垂れている紙のことです。
<譲り葉(ゆずりは)>
新しい葉が出てから古い葉が落ちるため、家督を子孫に譲り家系が続くとされています。
<橙(だいだい)>
鏡餅の上にのせるミカン科の果物です。
果実は冬に熟しても落ちにくく数年残ることがあり、1本の木に何代も実がなることから長寿の家族に見立てて家族繁栄を表しています。
以上のものは、スーパーやホームセンターなどでお正月が近づいてくると売られていることが多いため、ぜひ見てみてください。
また、この他にも地域によっては以下のようなものを一緒に飾ります。
<昆布>
喜びが広がる縁起物とされています。
「子生(こぶ)」とも書き、子宝に恵まれるという意味があります。
<串柿>
「桃栗三年柿八年」という言葉があるように、柿は長寿の木とされ、「喜び幸せが来る」意味(嘉来)のごろ合わせから来た縁起ものです。
三種の神器の剣になぞらえて1本の細い竹串の外側に2つずつ、中に6つの干し柿をさします。
<末広扇子>
家が代々末広がりに栄えていくようにという願いが込められています。
<するめ>
日持ちがいいことからいいことが続くという縁起ものです。
<南天>
赤い実で厄除けがあると信じられています。「難を転じる」という意味もあります。
鏡餅に必要なものや飾るものには、それぞれ大切な意味が込められています。
ただ飾るだけではなく、意味を知ってから飾るとより気持ちのこもったものになりそうですね。
鏡餅を飾る向きや方角は?
鏡餅を飾る方角として一番良いとされるのはその年の恵方
です。
飾る時は年末が多いと思われますが、新しい年の恵方に鏡餅を飾ります。
例えば鏡餅をリビングなどに飾る場合は、出来るだけ恵方に近い場所に飾ります。
選択肢がいくつかある場合は、恵方に近い方角に飾りましょう。
恵方以外では、昔から吉とされている南向きか東向きが良いでしょう。
恵方が分からない場合は、サイトやアプリなどですぐに調べることができますので、検索してみてくださいね。
鏡餅の飾り方の順番は?
鏡餅は12月28日に飾るのが一番良い
といわれています。
これは28が8の末広がりで縁起が良いとされているためです。
逆に29日は二重苦に通じて「苦餅」と呼ばれ縁起が悪いです。
また、31日も一夜飾りで縁起が悪いとされているので避けましょう。
飾る日に気を付けたら、次は飾る順番です。
年神様をお迎えする大切な鏡餅ですから、飾る順番も気を付けたいですよね。
鏡餅の一般的な飾り方は以下の通りです。
①三方の上に白い奉書紙を置く
②奉書紙の上に四方紅を置く。正面に角がくるように敷く。
③四方紅の上に四手を置く
④四手の上に裏白、そして譲り葉を置き、その上に鏡餅をのせる
⑤鏡餅の上に橙を置いて完成
この手順は一般的なものですが、必要なものが用意できれば簡単に飾ることができます。
また、飾り方は地方によって異なることもあります。
特に、橙のほかにするめや昆布を飾るところもあります。
するめや昆布は、鏡餅の上に置く、鏡餅の下に敷く、餅の間に挟む、など複数のパターンがあるため、お住まいの地域にそった飾り方をしてくださいね。
ちなみに、餅の間に挟むやり方は、昔の餅を手作りしていたころにしていた方法です。
現在では餅を手作りすることが少なくなってきているため、買ってきた鏡餅を飾ることも多いと思われます。
するめや昆布などの飾りを飾る場合は、餅の上に置くパターンが良いかもしれません。
まとめ
鏡餅は、年神様が宿る大切な場所です。
玄関に飾るのもいいですが、神棚や床の間など、家の中の大切な場所に飾るのが良いでしょう。
神棚や床の間がなくても、リビングやダイニングなども適しています。
恵方なども参考にしながら飾ってみてくださいね。
また、今回は飾るのに必要なものや飾る順番も紹介しました。
何気なく飾るのではなく、一つ一つの意味合いを知って飾るとよりすがすがしい気持ちで新年を迎えられそうですね。
地域によっても飾るものが変わってきたりもするので、あなたの住んでいる場所ではどのような鏡餅が主流なのか調べてみるのも新しい発見があるかもしれません。
日本古来の伝統的な鏡餅ですが、最近ではすべてがセットになった鏡餅や簡易的なものも売られていますので、今年の年末はぜひ鏡餅を飾って良い年をお迎えください。